新築の際サッシの選び方を正しく知ることが重要です。
「樹脂サッシの方がいいと言われたけど、本当に必要?」
「アルミ樹脂複合サッシでも十分じゃないの?」
「サッシにお金をかけると、どれくらい違う?」
「Low-Eガラスやトリプルガラスまで必要なの?」
と悩む人は多いと思います。
窓は住宅の外観を決めるだけではありません。
断熱・結露・冷暖房費・室内の快適性・防音・雨漏りリスクなどは、住宅性能に関わる点です。
さらに2025年4月から、原則としてすべての新築住宅・建築物に省エネ基準への適合が義務付けられました。国はさらに、遅くとも2030年までに新築住宅の省エネ基準をZEH水準まで引き上げる方針を示しています。
そのため、これから家を建てるなら、
「最低基準をクリアできる窓」ではなく、「10年後・20年後にも性能面で後悔しにくい窓」
という視点で考えることが重要です。
この記事では、アルミサッシ・アルミ樹脂複合サッシ・樹脂サッシの違いを、施工管理の視点から解説します。
先に結論|新築住宅なら「窓全体の性能」で選ぶ
最初に結論から言うと、サッシ選びで大切なのは、
「アルミか、樹脂か」だけで決めないことです。
サッシの性能は、
- フレームの材質
- ガラスの種類
- ガラス枚数
- Low-E膜
- 中空層
- スペーサー
- 窓の大きさ
- 窓の開き方
- 方位
- 日射遮蔽
- 施工精度
などによって変わります。
そのうえで、大まかな特徴を整理すると次のようになります。
| 種類 | 断熱性 | コスト | フレームの細さ | 結露しにくさ | 向いている住宅 |
|---|---|---|---|---|---|
| アルミサッシ | △ | ◎ | ◎ | △ | 非居室など限定的な用途 |
| アルミ樹脂複合 | ○ | ○ | ○ | ○ | 性能と価格のバランス重視 |
| 樹脂サッシ | ◎ | △ | △~○ | ◎ | 高断熱住宅・快適性重視 |
現在の日本の新築住宅では、すでに断熱窓が主流です。
日本サッシ協会の2025年調査では、戸建住宅の窓の材質は**アルミ樹脂複合製が61%、樹脂製が36%**で、この2種類を中心に断熱化率は98%を超えています。
つまり、
「新築なのに昔ながらのアルミサッシを選ぶ」ケースは、かなり少なくなっている
ということです。
なぜ窓の性能がそんなに重要なのか
住宅では、
屋根
外壁
床
基礎
窓
などを通して室内外の熱が移動します。
新築 サッシ 選び方の観点では、窓は壁より熱を通しやすい部位です。
さらに、断熱性能を重視しましょう。
例えば、せっかく壁に高性能な断熱材を施工しても、大きな窓の性能が低ければ、住宅全体としては熱が逃げやすくなります。
冬に窓際へ行くと、
「なんとなく寒い」
と感じることがあります。
これは単純な隙間風だけではありません。
窓の表面温度が下がることで、人間の体から窓側へ熱が移動する放射による冷えも関係します。
つまり窓の性能は、
室温だけではなく「体感温度」にも関係する
ということです。
2025年の省エネ基準で何が変わった?
2025年4月から、原則としてすべての新築住宅で省エネ基準への適合が必要になりました。
住宅の断熱性能を見る代表的な数字が、
UA値(外皮平均熱貫流率)
です。
簡単に言えば、
住宅全体からどのくらい熱が逃げやすいか
を表す数字です。
UA値は小さいほど断熱性能が高くなります。
現在の省エネ基準とZEH水準を比較すると、例えば次のようになります。
| 地域区分 | 省エネ基準・等級4 | ZEH水準・等級5 |
|---|---|---|
| 1・2地域 | 0.46 | 0.40 |
| 3地域 | 0.56 | 0.50 |
| 4地域 | 0.75 | 0.60 |
| 5~7地域 | 0.87 | 0.60 |
単位:W/㎡・K
環境省が示す住宅性能表示制度でも、等級4が現行の省エネ基準、等級5がZEH外皮水準に位置付けられています。
さらに国は、遅くとも2030年までに省エネ基準そのものをZEH・ZEB水準まで引き上げる予定です。
ここは、新築住宅を考えるうえで重要です。
今建てる住宅なら、
2025年の最低基準だけを見るのではなく、2030年以降を見据えて仕様を決めた方がよい
と私は考えます。
① アルミサッシ
アルミサッシは、フレームの大部分をアルミニウムで構成した窓です。
昔の日本住宅では非常に一般的でした。
アルミサッシのメリット
アルミは強度が高いため、比較的細いフレームを作れます。
そのため、
- 窓を大きくしやすい
- 見付けを細くできる
- 耐候性が高い
- 加工しやすい
- コストを抑えやすい
といったメリットがあります。
大開口やデザイン性という点では、アルミの特性は非常に優秀です。
問題は、
熱を伝えやすいこと
です。
外気温が低くなるとアルミ部分の温度も下がりやすく、室内側表面で結露が発生する可能性が高くなります。
昔の住宅で、
「冬になるとサッシがびっしょり濡れている」
という状態を見たことがある人もいるでしょう。
その原因のひとつが、サッシフレームの断熱性能です。
② アルミ樹脂複合サッシ
現在、日本の新築住宅で非常に多く採用されているのが、
アルミ樹脂複合サッシ
です。
基本的には、
室外側:アルミ
室内側:樹脂
という構造です。
日本サッシ協会も、熱伝導率の低い樹脂を室内側に使用することで、断熱性や結露防止性能を向上させる構造と説明しています。
なぜ外側をアルミにするのか
外部は、
雨
風
紫外線
気温変化
など厳しい環境にさらされます。
そこに耐候性の高いアルミを使用し、室内側には熱を伝えにくい樹脂を使う。
それぞれの材料の特徴を組み合わせた窓です。
施工管理目線で見ると、
性能・価格・扱いやすさのバランスが非常に良い
というのがアルミ樹脂複合サッシの特徴です。
そのため、新築戸建住宅で最も多く使われているのも納得できます。
③ 樹脂サッシ
フレームの主要部分をPVCなどの樹脂で作った窓です。
最大のメリットは、
断熱性能の高さ
です。
アルミと比較すると樹脂は熱を伝えにくいため、外気の影響を受けにくくなります。
その結果、
- 窓際が寒くなりにくい
- フレーム表面の結露を抑えやすい
- 住宅全体のUA値を下げやすい
- 暖冷房負荷を減らしやすい
といったメリットがあります。
特に、
高断熱住宅
ZEH
断熱等級6
断熱等級7
などを目指していくと、樹脂サッシは有力な選択肢になります。
一方で、
- アルミ樹脂複合より価格が高くなる場合がある
- 製品によってはフレームが太くなる
- 大開口では重量や製品寸法を考慮する必要がある
などの面もあります。
だから、
「樹脂サッシだから絶対に正解」
というわけでもありません。
住宅全体の設計と予算のバランスで判断する必要があります。
「樹脂サッシなら暖かい家」ではない
ここは非常に重要です。
樹脂サッシを採用しただけで、
高断熱住宅になるわけではありません。
例えば、
高性能樹脂サッシ
+
巨大な窓をたくさん設置
+
西日が大量に入る
+
庇なし
+
外付け日射遮蔽なし
という住宅を考えてみます。
冬は日射取得によって暖かくなる可能性がありますが、夏には強烈な日射が室内へ入り、冷房負荷が大きくなる可能性があります。
つまり、
窓は「断熱」と「日射」をセットで考えなければならない
のです。
Low-E複層ガラスも一緒に考える
現在の新築住宅では、
Low-E複層ガラス
が一般的になっています。
Low-Eガラスは、ガラス表面に特殊な金属膜を設けることで、熱の移動を抑えるガラスです。
さらに、
ペアガラス
↓
Low-Eペアガラス
↓
Low-Eトリプルガラス
と高性能化していきます。
ただし、これも単純に、
トリプルガラス=必ず正解
とは限りません。
ガラスを増やせば、
重量
価格
開閉時の重さ
なども増えていきます。
地域や窓の大きさによっては、Low-Eペアガラスでも十分なケースがあります。
U値を確認しよう
これからサッシを選ぶなら、
「樹脂です」「Low-Eです」
だけではなく、
窓全体の熱貫流率(U値)
を確認することをおすすめします。
U値は、
数字が小さいほど熱を通しにくい
という指標です。
2025年には、サッシの仕様とガラス性能から窓全体の熱貫流率を評価する方法も改定され、外皮性能のUA値計算に使用できる仕組みが整備されています。
つまり、
「樹脂サッシだから高性能」
ではなく、
その窓全体でどの程度のU値になっているか
を見ることが重要です。
施工管理目線では「取付け方」も重要
ここからが、カタログだけでは分かりにくい部分です。
どれだけ高性能な窓を買っても、
施工が悪ければ性能を十分に発揮できません。
現場ではサッシを取り付けた後、
サッシ
↓
防水テープ
↓
透湿防水シート
↓
外壁下地
などを連続させて雨水が内部へ入らないように納めます。
特に重要なのが、
サッシ周囲の防水処理
です。
住宅の雨漏りは、
「外壁材そのもの」
から発生するとは限りません。
窓の四周や配管貫通部など、
異なる材料が取り合う部分
が弱点になりやすいのです。
私なら現場でここを見る
サッシ取付後なら、私は次のような部分を確認します。
① サッシの水平・垂直
サッシがねじれたり傾いたりすると、
建具の動き
気密性
施錠
などに影響する可能性があります。
② サッシ周囲の防水
防水テープや透湿防水シートが、
水が上から下へ流れる原則
に沿って納まっているかを確認します。
水は必ずしも想定した場所だけを流れません。
そのため、
「水が入らないようにする」
だけでなく、
入ってしまった水を外へ出せる納まり
という考え方が重要です。
③ サッシ周囲の断熱欠損
サッシと柱・間柱の間には施工上の隙間ができます。
ここに断熱欠損があると、
せっかく高性能な窓を付けても、その周囲が熱橋になります。
つまり、
窓の性能だけでなく、窓と壁の接続部分まで見る
必要があります。
④ 気密処理
高気密住宅では、
サッシと気密層が連続していること
も非常に重要です。
例えば、
壁の気密性能は高い
↓
サッシ周囲だけ隙間がある
という状態では、住宅全体として十分な性能になりません。
実は「窓の大きさ」の方が重要になる場合もある
住宅会社との打ち合わせでは、
「アルミ樹脂と樹脂、どちらがいいですか?」
という話になりがちです。
しかし施工管理・住宅性能という視点では、
窓を何個付けるか
も非常に重要です。
例えば、
小さい高性能窓
と、
壁一面の巨大な高性能窓
では、後者の方が熱の移動量が大きくなる場合があります。
だから私は、
窓の性能だけではなく「必要な場所に必要な大きさの窓を付ける」
ことが大切だと思います。
「とりあえず大きな窓」はおすすめしない
住宅のCGパースを見ると、大きな窓は非常に魅力的です。
しかし実際に住み始めると、
夏暑い
冬寒い
家具が置けない
外から見える
カーテン代が高い
掃除が大変
といった問題が出ることがあります。
窓には、
採光
換気
眺望
日射取得
デザイン
という役割があります。
その役割がない場所に、
なんとなく窓を付ける必要はありません。
これは住宅設計では意外と重要です。
南・東・西・北で窓の考え方は変わる
サッシ選びは方位とも関係します。
南側
冬の日射を取り込みやすいため、大きな窓を設けるメリットがあります。
ただし夏の日射を防ぐため、
軒
庇
外付けブラインド
などをセットで考えます。
東側
朝日が入ります。
朝の光を取り込みたい寝室やダイニングなどではメリットがあります。
西側
注意したいのが西日です。
夏の午後は太陽高度が低いため、庇だけでは遮りにくくなります。
場合によっては、
窓を小さくする
遮熱型Low-Eガラスを使う
外付けの日射遮蔽を設ける
などを検討します。
北側
直射日光は入りにくいですが、安定した光を取り込みやすい方位です。
一方で冬は窓から熱を失いやすいため、高い断熱性能を持つ窓との相性がよいと考えられます。
引き違い窓ばかりにしない
日本の住宅では昔から、
引き違い窓
が多く使われています。
使いやすく、大きく開けられる便利な窓です。
しかし住宅性能を考えるなら、
FIX窓
すべり出し窓
縦すべり出し窓
なども組み合わせた方がよい場合があります。
窓は、
材質だけでなく「開き方」でも気密性能や使い勝手が変わる
からです。
例えば、
眺めるだけの場所ならFIX窓。
換気したい場所ならすべり出し窓。
大きく開放したい場所なら引き違い窓。
というように、
その窓に何をさせたいのか
から考えます。
結局どのサッシを選べばいい?
私なら、次のように考えます。
コストと性能のバランスを重視
アルミ樹脂複合サッシ+Low-E複層ガラス
を基本に検討します。
現在の日本の住宅では非常に一般的で、価格と性能のバランスを取りやすい仕様です。
ZEH水準以上・快適性を重視
樹脂サッシ+Low-E複層ガラス
を優先的に検討します。
さらに高い断熱性能を目指すなら、トリプルガラスも候補になります。
寒冷地
樹脂サッシのメリットがより大きくなります。
窓表面温度が下がりにくくなるため、結露対策や窓際の快適性という面でも有利です。
温暖地
アルミ樹脂複合でも十分な性能を確保できる住宅はあります。
ただし、
「温暖地だから窓性能は低くてよい」
とは限りません。
夏の冷房負荷や西日も考える必要があります。
サッシにお金をかけるか、断熱材にお金をかけるか
これは住宅を建てる人がよく悩む問題です。
例えば同じ50万円を使うとして、
断熱材をグレードアップするか
窓をグレードアップするか
という判断です。
答えは住宅によって違います。
重要なのは、
一部分だけ極端に性能を上げないこと
です。
壁だけ高断熱
窓は低性能
でもバランスが悪い。
逆に、
窓だけ最高性能
壁・天井の断熱性能が低い
のもバランスが悪い。
住宅は、
屋根
壁
床
基礎
窓
気密
換気
日射
を一つのシステムとして考える必要があります。
施工管理目線で考える「後悔しない窓選び」7項目
住宅会社との打ち合わせでは、最低でも次の7点を確認してみてください。
- 住宅全体のUA値はいくつか
- 窓全体のU値はいくつか
- アルミ樹脂複合か樹脂か
- Low-Eガラスの種類は何か
- ペアガラスかトリプルガラスか
- 南・西・北で窓仕様を変える必要はないか
- 窓の大きさと数は本当に必要か
これだけでも、
「営業担当に勧められた窓をそのまま採用する」
状態から一歩進んだ家づくりになります。
AI時代だからこそ「カタログ性能+現場施工」で考える
これからAIに、
「樹脂サッシとアルミ樹脂複合サッシはどちらがいい?」
と聞けば、性能の違いはすぐに説明してくれるようになります。
メーカーの性能表も簡単に比較できるでしょう。
しかし住宅では、
カタログ上の性能=完成した住宅の性能
とは限りません。
現場では、
サッシと構造体の取り合い
防水テープ
透湿防水シート
断熱材
気密層
外壁通気層
などがすべてつながって、初めて一つの窓になります。
だからこれから住宅を建てる人には、
「どの製品を選ぶか」だけではなく、「どう納められるか」まで見る
ことをおすすめします。
ここは、住宅カタログやAIのスペック比較だけでは分かりにくい部分です。
まとめ|これからの新築住宅は「最低基準」ではなく将来を見てサッシを選ぶ
サッシ選びをまとめると、
アルミサッシ
強度や価格にはメリットがありますが、断熱性能を重視する現在の新築住宅では、居室の主要な窓としては優先度が低くなっています。
アルミ樹脂複合サッシ
性能・価格・耐候性のバランスが良く、現在の日本の新築住宅で最も多く採用されているタイプです。
樹脂サッシ
断熱性や結露対策を重視する住宅では有力な選択肢で、ZEH水準以上の住宅や高断熱住宅との相性が良いサッシです。
ただし、一番大切なのは、
サッシの材質だけで住宅性能を判断しないこと。
窓全体のU値、ガラス、窓面積、方位、日射遮蔽、そして施工品質まで含めて考える必要があります。
2025年4月から新築住宅の省エネ基準適合が義務化され、さらに遅くとも2030年までにはZEH水準への基準引き上げが予定されています。
これから新築するのであれば、
「今の最低基準を満たすか」ではなく、「10年後にも十分な住宅性能と言えるか」
という視点を持ってサッシを選んでみてください。
そしてサッシのカタログを見るときは、商品名や「樹脂」「Low-E」という言葉だけではなく、
窓全体のU値と住宅全体のUA値
まで確認する。
これが、後悔しにくい窓選びの第一歩だと思います。
