東京ディズニーシーのアメリカンウォーターフロントにそびえる「タワー・オブ・テラー」(タワーオブテラー 建設費)。
古びた高級ホテルのような外観ですが、建築の視点で見ると、単なるテーマパークの「ハリボテ」ではありません。
高さ約59mの建築物の内部に、巨大な昇降設備、ライド設備、特殊演出、待機スペース、機械設備などを組み込み、そのうえで「100年以上前からそこに存在しているホテル」のように見せています。
この記事では、タワー・オブ・テラーについて、工期、投資額、構造、階数、高さ、施工上の特徴などを、公開されている資料をもとに施工管理の視点から解説します。
タワー・オブ・テラーの建築概要
まず、タワーオブテラー 建設費に関する確認できる情報を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | タワー・オブ・テラー |
| 所在地 | 東京ディズニーシー・アメリカンウォーターフロント |
| オープン | 2006年9月4日 |
| 高さ | 約59m |
| 階数 | 14階建て相当と紹介される資料あり※ |
| 投資金額 | 約210億円 |
| アトラクション形式 | フリーフォール型ライド |
| 乗車定員 | 1台22名 |
| 体験時間 | 約2分 |
| ライド設備 | 三菱重工業が国土交通省の構造方法等の認定を取得 |
| 構造種別 | 建築物としての正式な構造種別は公開一次資料では確認できず |
| 正式な工期 | 着工・竣工年月をセットで示す公式資料は確認できず |
東京ディズニーリゾート公式では、タワー・オブ・テラーは2006年9月4日にオープン。現在の公式案内でも1台22名、所要時間約2分のアトラクションとして紹介されています。
※一般向け資料では14階建ての建物として紹介される例がありますが、これはホテル・ハイタワーの階層表現を含む可能性があり、建築確認上の「法定階数」を示した公式資料とは分けて考える必要があります。
タワー・オブ・テラーの建設費は約210億円
タワー・オブ・テラーについて最も驚く数字の一つが、約210億円という投資額です。
これは単なる噂ではありません。
オリエンタルランドのAnnual Reportでは、主な追加アトラクションへの投資金額として、
「タワー・オブ・テラー 210億円」
と公表されています。
ただし、ここで注意したいのが「建設費」と「投資金額」は必ずしも同じではないということです。
210億円すべてが鉄骨、コンクリート、外装などの純粋な建築工事費という意味ではありません。
テーマパーク施設の場合、建築工事のほかに、ライド設備、特殊機械、制御設備、映像・音響設備、特殊照明、美術・装飾工事、外構、設計・開発費など、多くの費用が含まれます。
そのため正確には、
「タワー・オブ・テラーの総投資額は約210億円」
と表現するのが適切でしょう。
それでも、一つのアトラクションに210億円という規模は非常に大きな投資です。
工期はどのくらいだったのか?
タワー・オブ・テラーについて、「○年○月着工、○年○月竣工」という一般建築のような工期情報は、公開されているオリエンタルランドの資料からは確認できません。
ただし、プロジェクトの流れをある程度追うことはできます。
オリエンタルランドは2003年時点ですでに東京ディズニーシーへの「タワー・オブ・テラー」導入計画を公表していました。
さらに国土交通省の資料を見ると、三菱重工業神戸造船所が申請した「東京ディズニーシーに設置する『タワー・オブ・テラー』」について、2004年10月8日に構造方法等の認定が行われています。
そして実際のオープンが2006年9月4日です。
したがって、少なくとも2004年にはライド設備を含む具体的な設計・施工フェーズに入っており、そこから開業まで約2年間。
企画・設計まで含めれば、数年規模の大型プロジェクトだったことが分かります。
通常の建築と違い、完成したらすぐ引き渡して終わりではありません。
アトラクションでは建築工事完成後にも、ライド設備の調整、制御システムの確認、安全試験、演出確認、キャストのオペレーション確認などが必要になります。
そのため「建物を完成させる工程」と「アトラクションとして開業できる状態まで仕上げる工程」を分けて考える必要があります。
構造は鉄骨造?RC造?
ここはインターネット上で情報が混在している部分です。
タワー・オブ・テラーについて、建築物本体が「S造」「RC造」「SRC造」と明記された信頼できる一次資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。
そのため、
「タワー・オブ・テラーは○○造である」
と断定するのは避けたほうがよいでしょう。
一方で、建築的に重要なのは、この建物が一般的なホテルではなく、巨大な垂直ライド設備を内包する特殊建築物だということです。
国土交通省の認定資料からは、三菱重工業がタワー・オブ・テラーの遊戯施設について認定を受けていることが確認できます。
つまり建築躯体だけを考えて設計できる建物ではありません。
ライド側のシャフト、ガイド、駆動装置、安全装置、制御設備などと建築構造を高い精度で取り合わせる必要があります。
施工管理目線で見る最大のポイントは「建築×機械×演出」
タワー・オブ・テラーの施工で特に難しかったと考えられるのが、建築工事とライド設備工事の取り合いです。
普通のホテルであればエレベーターも重要な設備ですが、あくまで人を階から階へ運ぶための設備です。
しかしタワー・オブ・テラーでは、エレベーターそのものがアトラクションの中心です。
ライドが垂直方向に高速で移動し、決められた位置で停止し、そこに映像・音響・照明・扉などの演出が連動します。
そのため施工管理の視点では、単純な躯体精度だけではなく、
「建築躯体の精度」+「機械設備の精度」+「電気・制御」+「ショー演出」
を同時に成立させる必要があります。
一般建築以上に施工図・製作図・設備図の整合性が重要になる建物だったと考えられます。
なぜ高さ59mなのか?
タワー・オブ・テラーの高さは約59mです。
高さだけを見れば、一般的な建築物ではおよそ15~20階程度のビルに相当するスケールです。
よく知られている説として、
「60m以上になると航空障害灯が必要になるため、景観を壊さないよう59mにした」
という話があります。
航空法では一定条件に該当する高さ60m以上の物件について航空障害灯などの規定があります。
そのため建築的には非常に興味深い説です。
ただし、「ディズニーが航空障害灯を避けるため59mに設定した」という設計意図そのものをオリエンタルランドが公式に説明した一次資料は確認できませんでした。
したがってブログでは、
「59mという高さについては航空障害灯との関係がよく語られているが、公式に設計理由として確認できる資料は見当たらない」
と書くのが正確です。
建物の見どころ① 世界中の建築様式が混在する外観
タワー・オブ・テラーの面白さは、単純に古いホテルを再現しているわけではないことです。
公式のバックグラウンドストーリーでは、ホテルハイタワーは大富豪ハリソン・ハイタワー三世によって建てられた建物。
東京ディズニーリゾート公式も、ハイタワー三世が世界中のさまざまな建築様式を取り入れ、増築を繰り返したことで現在の姿になったと説明しています。
だから外観を見ると、左右対称で整然とした一般的なホテルとはかなり違います。
塔、アーチ、屋根、レンガ調の壁、装飾など、異なる文化を思わせるデザインが意図的に組み合わされています。
普通の建築なら「統一感がない」と言われそうなデザインを、逆に物語として成立させているところが面白いポイントです。
建物の見どころ② 「新品を古く見せる」という特殊な仕上げ
建築工事では通常、汚れ、ひび割れ、色ムラは施工不良として扱われます。
ところがテーマパーク建築では、それを意図的に作る場合があります。
ホテルハイタワーは、長期間閉鎖されていた古いホテルという設定です。
つまり完成したばかりなのに、
「昔から建っていたように見せる」
必要があります。
外壁の色ムラ、経年劣化したような質感、装飾部材、看板、植栽などを組み合わせて、新築特有のきれいさを消していくわけです。
一般建築では避けるものを、テーマパークでは品質として作り込む。
ここが普通の建築とテーマパーク建築との大きな違いです。
建物の見どころ③ ロビーまでが「建築による演出」
タワー・オブ・テラーは、ライドに乗る前からアトラクションが始まっています。
ホテルのロビーには大きな吹き抜け、ステンドグラス、壁画、世界各地から集められたという設定の美術品などがあります。
東京ディズニーリゾート公式でも、ホテルのロビーにステンドグラスや数々の壁画が配置されていることが紹介されています。
これは単なる待機列ではありません。
建物の外観、エントランス、ロビー、展示物、照明、そしてライドまでを連続させることで、ゲストが少しずつ物語の中へ入っていく空間構成になっています。
建築そのものを「演出装置」にしている好例です。
210億円は何に使われたのか?
詳細な工事費内訳は公表されていません。
しかし施工の観点から考えると、この施設には一般的な建築以上に多くの専門工事が必要だったと考えられます。
躯体工事、外装工事、内装工事、昇降・ライド設備、特殊制御、電気設備、映像・音響、特殊照明、防災設備、美術造形、サイン、外構、植栽などです。
そして、それぞれが独立して存在するのではなく、一つの物語として見えるように納めなければなりません。
つまり210億円という金額を見るときは、
「59mの建物を造るための金額」ではなく、「建築・ライド・機械・制御・映像・美術を一体化した巨大エンターテインメント施設を造るための投資」
と考えたほうが実態に近いでしょう。
タワー・オブ・テラーから分かるテーマパーク建築のすごさ
一般建築では、「構造」「設備」「仕上げ」「コスト」「工期」が重要です。
テーマパーク建築では、そこにもう一つ、
「物語を壊さないこと」
という非常に厳しい条件が加わります。
構造的に必要だからといって、現代的な部材をそのまま見せることはできません。
設備が必要だからといって、世界観を壊す位置に機器を設置することもできません。
安全性、施工性、メンテナンス性を確保しながら、ゲストからはそれらをできるだけ見せず、「1912年のニューヨークに存在する古いホテル」に見せる。
タワー・オブ・テラーの建築としての本当のすごさは、この部分にあるのではないでしょうか。
まとめ|タワー・オブ・テラーは巨大な「建築+機械+演出」の集合体
タワー・オブ・テラーは2006年9月4日にオープンした、高さ約59mの大型アトラクションです。
オリエンタルランドが公表している投資金額は約210億円。
さらに国土交通省の資料から、ライド設備について三菱重工業が2004年に構造方法等の認定を取得していたことも確認できます。
一方、建物本体の正式な構造種別、建築確認上の階数、着工・竣工年月などは、一般公開されている一次資料では確認できません。
分からない部分を推測で埋めるのではなく、
「確認できる事実」と「建築・施工上の考察」を分けて見ることも、建築を知る面白さの一つです。
次に東京ディズニーシーを訪れたときは、アトラクションとしてだけではなく、
「この巨大なライド設備をどうやって建築の中に納めたのか」
「新品の建物をどうやって100年以上前のホテルに見せているのか」
「設備や構造をどこに隠しているのか」
という視点でタワー・オブ・テラーを眺めてみてください。
今までとは少し違った建物の見え方になるかもしれません。
FAQ:タワー・オブ・テラーの建築・施工
タワー・オブ・テラーの建設費はいくら?
オリエンタルランド公表の投資金額は約210億円です。ただし、これは純粋な建築工事費だけを意味するものではなく、アトラクション設備などを含む投資額として公表されています。
高さは何m?
約59mです。
何階建て?
一般向け資料では14階建てとして紹介されることがあります。ただし、建築確認上の正式な階数を示した一次資料は確認できません。
構造は鉄骨造?
建物本体についてS造・RC造・SRC造などの正式な構造種別を明記した一次資料は確認できません。そのため本記事では断定していません。
誰がライド設備を造った?
国土交通省の認定記録では、三菱重工業株式会社神戸造船所が「東京ディズニーシーに設置する『タワー・オブ・テラー』」について認定を取得しています。
いつオープンした?
2006年9月4日です。
※本記事は東京ディズニーリゾート、株式会社オリエンタルランド、国土交通省などの公開資料をもとに、建築・施工の観点から独自に整理・考察したものです。東京ディズニーリゾートおよび関連各社の公式記事ではありません。
